アメリカの塾事情について ~日本との違いって一体なに?~

アメリカの塾事情について ~日本との違いって一体なに?~

 日本では塾や予備校がとても発達しています。それだけ需要があるのでしょう。大学、高校、中学など各種入試に備えるための塾や予備校はもちろん、それ以外にも、苦手科目を補うための基礎的な授業を行う塾、得意科目をさらに伸ばすために学校よりも高度な授業を行う塾、さらには英語など特定の教科を専門に教える塾や、医学部など特定の進路を目指す人に特化した塾も存在します。

私自身も中学の3年間は高校入試に備えて学習塾に通っていましたし、高校2年生から3年生の大学受験終了まではそれに備えて予備校に通っていました。日本での入試を経験してきた人で、塾や予備校に全く通った経験のない人というのは、おそらくかなり珍しいのではないでしょうか。

 しかし、文化の異なるアメリカではこういった面でも日本とはかなり違いがあります。日本の教育を受けてきた人にとっては信じられないくらい、アメリカでは塾や予備校は発達していません。アメリカでは小学生や中学生の子どもで塾に通う人はほとんどいません。私も小学5、6年生の時期をアメリカで過ごしましたが、現地では全く塾に通っていませんでしたし、周囲の人にも通っていた人はいなかったと思います。

 今回はこうしたアメリカの塾事情について考えてみます。

日米の入試形態の違い

 よく知られているとおり、アメリカには世界屈指の大学が各地にあります。北東部にはハーバード大学やイェール大学などのいわゆる「アイビー・リーグ」と呼ばれる8大学などがありますし、中西部にはシカゴ大学やミシガン大学などが、西部にはスタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校などもあります。

 これほど名門大学が数多く存在しながら塾や予備校があまり発達していないというのは、とりわけ日本で教育を受けてきたご両親にとっては不思議に思われるかもしれませんね。

アメリカで塾や予備校があまり発達していない理由の一つとして、日本とは入試の形態がかなり異なっていることが挙げられます。

 日本の一般的な入試の形態は、一発勝負の学力試験です。これは大学受験でも高校受験でも中学受験でもほとんど変わりません。そして試験の内容も、原則として知識をどれだけ詳細に暗記しているかが問われます。思考力が要求されると思われがちな数学(算数)や物理でさえ、少なくとも大学入試までは解法をいかに覚えてきたかが問われる暗記の試験であることに変わりありません。

 このような形態の試験の場合、対策としては、入試に登場する可能性の高い分野の知識を詳細に暗記し、入試当日にそれらの知識をできる限り覚えている状態にすることが効果的ですから、日本でよく見られる塾や予備校の授業の形式とも相性が良いということになります。

 一方、アメリカの入試は日本とはかなり異なり、例えばアメリカの大学入試は一発勝負の学力試験という形態ではなく、高校での成績や本人のエッセイ、課外活動、SAT(アメリカの大学進学適性試験)の成績、推薦状など、志望者に関する様々な資料を大学が総合的に判断して合否が決定される形態となっています。志望者がいかに日頃の生活で好成績を収めたり、人間として成長してきたかが問われることになります。

 このような形態には、入試当日に備えてできる限り知識を詳細に覚えさせるという日本型の塾は構造的にマッチしないことになります。アメリカで塾や予備校が発達しない背景の一つには、こうした日米の入試形態の違いがあると思われます。もちろん、不得意な科目の成績を上げるためであったり、SATのために塾に通うといったケースはアメリカでもありますが、日本のように入試に備えて塾や予備校に通うことが半ば当たり前のような環境になっているわけではないのです。

日米の学校教育の違い

 アメリカで塾や予備校が日本のように発達していないもう一つの理由として、両国の学校教育の違いを挙げることができると思います。

 日本の学校では、基本的には全生徒が同じ学力レベルの教育を受けることが前提となっています。例えば、一つのクラスの中にも数学が得意な生徒と苦手な生徒が混在していることが少なくありませんが、基本的にはどちらの生徒もクラスの一員として同じ数学の授業を受けます。私自身の経験を振り返ってみても、中学では特にその傾向が強かったと思います。高校の後半になると、英語や数学では学力別に授業が行われるようになりましたが、その他の教科では選択科目が増えたため(例えば地歴では日本史と地理から選択)、そこからさらに学力別に生徒を分けるのは困難という事情もあったためか、行われませんでした。

 このような形で学校教育が進められる場合、苦手な生徒にも理解してもらえるように授業を進めていく必要があるために、難易度の高い授業はなかなかできません。もちろん、学力の高い学校とそうではない学校という区別はあるのですが、例えば学力の高い学校にいる生徒でもある特定の教科はとても苦手、というようなケースもあり、やはり難関大学の入試問題に対応するという点で見れば学校の授業だけでは限界があるのかもしれません。そのため、難関大学の志望者は学校以外にも塾や予備校に通うことで入試に備える必要性が出てきます。

 一方、アメリカの学校では、生徒にそれぞれの学力レベルに合った教育を受けさせることを日本の学校よりも重視しています。いわゆる「飛び級」も頻繁にありますし、逆に学力水準が達していないと判断された場合は小学生であっても留年になることもあります。また、早生まれであったり、移民などで英語が十分にできない子どもの場合、親や学校の判断で実年齢の学年よりも下の学年で学ぶことも可能です(これについては恥ずかしいこととは見なされません)。そのため、優秀な生徒については難易度の高い授業を受けさせる慣習や制度が学校教育の中に根付いており、日本のように学校の授業だけでは難易度の高い入試問題に対応できないために塾や予備校に通うという必要性に乏しいという事情もあるのだと思います。

まとめ

 日本で塾や予備校が非常に発達している一方でアメリカではそれほど発達していない背景には、こうした両国の入試形態や学校教育の違いが影響しているのでしょう。日米どちらの学校に進学するとしても、こうした両国の教育制度や慣習のあり方を知っておくことがとても重要になってくると思います。

【PR】

海外子女向けオンライン家庭教師のEDUBAL
海外子女向けオンライン家庭教師のEDUBAL