これホント?ドイツの子どもたちの学力低下が叫ばれている!?

これホント?ドイツの子どもたちの学力低下が叫ばれている!?

日本でも学力低下が叫ばれている今日この頃ですが、実はドイツでも20年ほど前から子どもたちの学力の低下が叫ばれ、なんとかして学力を上げようと必死です。
今回はドイツの子どもたちの学力低下について見てみたいと思います。

■PISAが示した学力低下の証拠

 かつては多くのノーベル賞受賞者を輩出してきたドイツ。しかし、近年子どもたちの学力低下が叫ばれています。

ことの発端は、2000年のOCDE(Organisation for Economic Co-operation and Development/日本語訳:経済協力開発機構)が主催したPISA(Programme for International Student Assessment/日本語訳:学習到達度調査)。加盟国32か国の15歳の生徒を対象に調査を実施したところ、ドイツは「総合読解力」で21位、「数学」と「科学」においてまさかの20位という順位を記録してしまいました。ちなみに、日本はこの年、「総合読解力」は3位、「数学」は1位、科学は2位という結果を残しています。

優秀なイメージが多いドイツですが、今から遡ること16年前でこれほどまでに学力の開きがあることには筆者自身も正直に言って驚きましたが、この結果に驚いたのはドイツ人も同じこと。子どもたちの学力低下に危機感を覚え、原因の追究と対策を打ち立てていくことになります。

しかし2012年の調査でも、ドイツは「総合読解力」は20位。調査対象の国は65か国と増えているものの、なかなか有効な対策を講じることができないドイツのフラストレーションを感じます。ちなみに日本は4位。この16年の間に浮き沈みはあるものの、比較的上位をキープできている様子です。

参照:OECD 生徒の学習到達度調査(pdf)

■原因は?移民問題との関係も指摘

なぜ、このように著しく学力が低下してしまったのでしょうか?

まず、指摘されたのは「移民問題」でした。ドイツは戦後、労働力を補うために積極的に移民を受け入れてきた歴史があります。戦後はトルコ系移民の受け入れ、それから90年代半ばには旧ユーゴスラヴィアからの移民、2000年代に入ってからは東欧諸国、それから南欧からの移民も多くなりました。最近ではシリアやアフリカからの難民の受け入れ、そしてアジアからも多くの移民がドイツで暮らしています。

移民はドイツ社会に適応して生きていくことになり、子どもたちはドイツの学校に通うことになります。しかし両親ともにドイツへの移民だった場合、その子どもが学校に通う時点ではドイツ語能力はそれほど高くなく、クラスに移民が多いと学力が下がるという指摘につながったわけです。

特に移民の多いベルリン市内では、誰もが平等に学校へと通えるようにと学校の授業料が格安に設定されています。3歳児以上の公立の保育園(KITA)であれば、給食費の一ヶ月に24EURのみで(約2,500円)です。ベルリン市はドイツの中ではどちらかと言えば貧しい土地ですが、子どもたちのこれ以上の学力低下を避けるためには仕方のない策だったことがわかります。

長らく学力低下は移民問題と結びつけられて考えられてきた一方で、実際にドイツの専門家チームがPISAの結果を分析していくと、移民でドイツ語以外を母国語とする子どもと、ドイツ語を母国語とする子どもの中には大きな開きは見られなかったという結果も出ています。

実際には現在移民問題を抱えるのはドイツだけではなく、他の国を見てみても多くの移民がおり、学力低下を移民のせいだけにするのはやはり無理があるのではないかと思います。

■早すぎる進路選択

次に考えられたのが、ドイツ独特の進学システム。
以前こちらでも書いたことがありますが、ドイツは10歳の時に自分の進路を決めなくてはなりません。ベルリンでは12歳、小学6年生を終えてからギムナジウムに行く人が大半ですが、それでも日本に比べても早い時期に進路を決定しなくてはなりません。

 将来的に大学へ進むためには、アビトゥーアと呼ばれる大学入試試験に合格する必要があり、そのアビトゥーアを取得する子どもたちはギムナジウムへと進学することになります。日本では、高校受験の時に今後のおおよその進路が決定しますが、そこで大学進学の道が完全に閉ざされるわけではありませんし、自分の努力次第では後から大学に進学する人もいます。この点では非常にフレキシブルと言えます。一方でドイツでは子どもが10歳になる頃、子どもたちは最初の進路選択の帰路に立たされます。

人の成長はそれぞれ。自分や自分の周りにいた同級生に置き換えて考えてみると、10歳までは勉強ができなかったけれど、それからの頑張りで良い高校・大学に進学できたという人もいるはずです。しかしドイツでは10歳の時に進路が決まってしまうことが大半ですので、もしこの10歳の時点で進路の道が立たれてしまえば、勉強に対しての情熱を失ってしまうのは当然のことと言えるでしょう。
移民が多いということだけがドイツの子どもたちの学力を落としているとは思いませんが、1言語以上の言葉を覚えなくてはいけない子どもたちにとって、進路が決まる10歳までにドイツ語での勉強も覚えなくてはならないということはとても荷が重いことかもしれません。

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